『 ど素人からの開業記 』
「今まで大事なことは直感で決めてきました。
沖縄に移り住みますので今後も先生の整体を勉強させてください」
と
ぼくが言ったとき、
比嘉先生は、眼鏡の向こう側にある大きな眼をさらにおっきく見開いて、
「あっはっはっはっは〜! あなた、おめでたい人だね〜。
直感か。おめでたい!」
と大きな声で笑い、次のように続けました。
「私も同じですよ。直感をとっても大事にしている。今日もそう。
『 あなたとはじっくり話すべきだ 』という私自身の直感に従って、
治療時間を特別に2時間とっておいたんですよ。わたしも、おめでたいね〜」
比嘉先生の言葉と笑顔を受けとったぼくは、涙がこぼれそうになりました。
このときの決断と、これまでの自分の生き方が報われたようにさえ思えたのです。
その当時、大阪にある社会教育団体の職員だったぼくは、すでに辞意を固め、「大人
を元気にする仕事をしよう」と決めていました。しかし、その方法は見えていません
でした。インターネットの検索でひっかかった「アメリカン整体」のHPに、ぼくは
文字通りなにかが「ひっかかって」いました。「このHPの背景にある哲学のような
ものが気になる。この人に直接会って話を聞きたい」そうしてメールで治療の予約を
入れ、沖縄のアメリカン整体を訪れたときのやりとりが、上に書いたようなものだっ
たのです。
これまでぼくの眼前を塞いでいた霧が晴れ、
具体的に、「沖縄」で「HST整体」をする。と決まったのがこの瞬間でした。
少し、その当時の仕事のことを説明させてください。ぼくが関わっていたのは「教育
キャンプ」と呼ばれる、「のびのびとした子どもを育てる」ことを目的とした専門的
なキャンプでした。学校や家庭という日常を離れ、自然環境の中でいろんな野外活動
を子どもたちに体験させながら、グループカウンセリングなどを用いてその子の内面
の成長を援助するのです。
やりがいのある仕事でした。数日のキャンプの間に子どもたちは今まで自分でも知ら
なかった自分の力に気づき、他の人との関わり方を学び、元気になって帰っていきま
す。ぼくはずっとこの仕事を続けたいと思い、実際そうするのだと思っていました。
ところが、徐々に気がついたことがありました。それは、「元気にするべきは子ども
だけではない」ということです。キャンプ場に子どもたちを引率してくる「大人たち
」の多くが、疲れ、自信を失っているように見えました。疲弊した大人は、自由な子
どもたちをコントロールしようと、強制し、必要以上に管理の目を強めていました。
子どもたちを叱りとばす様は、ヒステリックでもありました。
野外ではあんなに元気に奔放に生命を謳歌させていた子どもたちが、引率の大人の前
に戻ると、再び、うつろな眼をして下を向く姿を何度も見ました。こうならないため
には、学校で、家庭で、大人たちが元気でいられるようにしなければいけない。子ど
もたちが、「はやくあんな風な大人になりたい」と思える、キラキラ輝いてる大人を
、どんどん増やす必要がある。
元々、子どもたちとかかわり学びあうことを仕事にしていたぼくが、「大人を元気に
する仕事をしよう」と思ったのには、こんな背景がありました。
03年、2月半ばに、沖縄で初めて比嘉先生とお逢いし自宅に戻った後、ひと月半で
荷物をまとめ、マンションの買い手を見つけて売り払い、4月には沖縄に引っ越して
きました。小学校4年と1年生になる息子たちの学校のスタートに間に合わせたかっ
たのです。
引越し後、前職の残務をかたづけるためぼくは関西に戻り、家族と合流したのは8月
。そして、その次の日から「HST講習会」に参加したのです。
講習会が終わってすぐの感想文に、次のように書いています。
「講習会受講後の率直な感想は、『 ワァオ、ここから先は自分で進むのか! 』 とい
う、戸惑い8割・期待感2割の入り混じったものでした。
高性能の乗り物の操縦技術を教わり、目的地を示してもらって、『 さあ、ここからは
自分の力で、自分の方法で行きなさい。』 と言われたようなイメージです。
こうなること自体は、私自身予想していたのですが、実際にマシンを見て、操縦技術
を目の当たりにして、『 うーん、乗りこなすにはしばらくかかりそうだな。それでも
とにかく始めるしかないな。』 と感じています。」
整体など、まったくの「ど素人」だったのですから仕方ありません。首の骨が7つあ
ることさえそのとき初めて知ったのです!
それからは、専業主夫をしながら勉強会に参加して技術の習得に努めました。沖縄の
仲間たちの人を受容れる度量の広さと温かさのおかげで、ぼくはとてもスムーズに沖
縄の生活に溶け込ませてもらえたと思います。また、その頃すでにe-HSTの取り組
みを始められていた福地先生の学校にお邪魔して、子どもたちの治療を手伝わせてい
ただいたこともぼくには大きな収獲でした。
一時期だけ、苦しかった時があります。
それは沖縄に来てHSTの勉強を続けてはいるものの、開業するという踏ん切りがつ
かずにいた頃です。自分の技術が上達しているのかもわからず、「このままダメにな
っちゃうんじゃないだろうか。」と思ったことがあったのです。
そこから抜け出す鍵は、「初心」と、「肚決め」でした。
「俺はなんのために大好きだった前の仕事を辞めて整体をすると決めたのか!?」
「一人でも多くのイキイキした大人を、子どもらの前に登場させるんじゃなかったの
か!?」
「いついつまでに開業する」と、肚を決めてからは、ビックリするぐらい急激に周り
のことが動き始め、その3ヵ月後には「てぃーだ整体院」を開業していたのでした。
そして、この夏で4年目に入りました。家族4人、(痩せることもなく!)食ってい
けてるのは本当に有難いことです。
HSTIを学ぶ人の全員が開業を目指しているわけではないでしょう。
でも、それぞれの方に、最初にやってみようと思ったときの理由があるはずです。自
分がもっと元気になりたい。家族を元気にしたい。大切な人を幸せにしたい。
その「初心」を、どうかいつも持ち続けてください。
そして、それを具体的な行動として「やる」んだ、という「肚決め」をぜひ行なって
ください。
HSTIは、ヒューマン・サクセス・テクニックです。
初めに、「こうありたい」というイメージを持ち、肚を決めて「行動」したとき、
イメージだったものが現実になっていることを、誰もが経験できるはずです。
あなたの「こうありたい」を現実にしてください。
絶対に大丈夫ですよ!ど素人のぼくにできたんですから!!
是非、一緒にがんばりましょう!!!
2007.10.10
てぃーだ整体院
阪中 玄